
糸島の自然に囲まれたアトリエ
ここが作品の出発地点
糸島に移住してきて約16年。海風が吹き、木々が揺れて葉っぱが擦れる音がする。その音の向こうから波の音がかすかに聞こえてくる。そんな糸島の自然中に囲まれ彫刻家HITOMIKOさんのアトリエは在る。
人工的な音がほとんどしないその空間で、作品たちは日々のびやかに創られていく。
大きなキャンバスから掌の木彫りに
一木造りに込められた確かな経験
短大を卒業してからしばらくは、ずっと絵を描いていたというHITOMIKOさん。2018年までは、絵を描いたり、アクセサリーを作ったり。絵は、油絵やアクリル、パステルなど様々な画材使って描き、豊富な画歴を持つ。「絵は、ずっーと描いてましたが、あるときぱたっと。あ、もう絵はいいかな〜って思ったんです。父の影響もあり、木彫りはずっとしたいと思っていて。数年は樹脂で猫ちゃんを作っていたんですが、その時も固めた樹脂を彫ってました。その間も木彫りをしたいという気持ちがどんどん膨らみ、ついに今その気持ちが爆発しているという状態です笑。木彫りがもう楽しくて楽しくて。作ってる時から、もう次はあれを頭に乗せてみようって考えながら作っています。」
物心ついたときから、父親である木戸龍一氏の彫刻に囲まれてそだったHITOMIKOさん。父から受けた影響はかなり大きかったそう。やんのかシリーズは、手のひらサイズといえども、作品に込められたこだわりとクオリティの高さから、魂にぐっと刺さる魅力がとにかく凄い。艶を出すために使用する塗料も、モチーフの部位ごとに細かく使い分けられている。「一木造り」と言われる、いわゆるひとつの木の塊から削り出された、繊細な猫や頭に乗っているモチーフたち。パーツを作ってくっつけているかと思いきや、まさかひとつの塊から削り出されているとは!!
また、どの角度から見ても見事なそのフォルムに、彼女のデッサン力の高さが窺える。
「今までの経験が、全てこの木彫りに生かされていると思います。」
終始穏やかに話すHITOMIKOさんが彫刻刀を持ち木を削ると、はっとするような気迫が伝わってくる。一度作品を作り出すと、一心不乱に作品作りにのめり込み、「あ、今日ご飯食べてなかった」ということもしばしばだとか。そうやって生み出されるやんのかシリーズのにゃんこたち、今後はどのような展開を見せてくれるのか、ファンの期待も高まります。
インスピレーションは実家の愛猫から
平らな額から誕生した愛しきシリーズ
最後に、頭に乗せているシリーズが誕生したきっかけを聞いてみました。
「以前実家でしゃむ猫を飼っていて、22歳まで生きてくれて。私が20代の時から40代まで一緒にいました。側でじっと見ながら、頭が平らだな〜っていつも思ってて。猫ちゃんの頭に直接何かを載せるのはアレなんで笑。木彫りにその時の思いを乗せてみました。」楽しそうにくすくすと笑うHITOMIKOさん、にゃんとも微笑ましいエピソードから、愛猫ちゃんと過ごした愛おしい時間の空気を感じました。