
全てがてづくり
開墾した糸島の山間で生まれる作品
1987年に糸島のこの地で窯を開いて38年。18歳から作陶をしているという洞さん。
約1300坪ある山を自ら開墾し植樹した桜の木々も、工房と同じく樹齢38年。工房を彩るように咲き誇っている。桜の季節に工房を訪れれば、まるで桜の秘境に足を踏み入れたような気持ちになれる。
たった一人で作業小屋や展示室を基礎から作ったり、裏山の筍を掘ってゆがいたり(シーズン中は毎日!)草を刈ったり、薪を作ったり、毎日訪れる猪の対応をしたり……洞さんの毎日はとても忙しい。
火と向き合い 土と共に生きる
芸術大学で陶芸を勉強し、陶芸の訓練校で更に勉強。その後小石原高取焼で修行を積む。師匠と寝食を共にし、作陶に励んだという。
その後生まれ故郷の糸島市に窯を開き、土と炎に真摯に向き合い黙々と作陶を行なってきた。
日常使いのカップやお皿から、力強い花器やオブジェまで、作品は多岐にわたる。
単窯と呼ばれる薪窯を使い生み出された作品には、炎の跡が景色としてうつり、その計算された美の迫力に息を呑む。
「自分ではどれがいいかわからんとですよ」そういいながら膨大な作品の間を歩き、あれも手作り、ここも手作りと楽しそうに教えてくれる。
ああ、本当に「ものを創るということ」が好きなんだなと伝わってくる。
洞さんと、猫と、作品と。
もちろん手作りという単窯(たんがま)を見せてもらっていると、猫がするりと足元にやってきた。
今は2匹いるという猫たち。一匹は半年前に自宅の玄関先で鳴いていたのをかわいそうに思い保護したという。猫に餌をあげないといけないから、ここ13年くらいは毎日来ているし365日休みはありません。と洞さん。
それは大変!!と思ったがすぐに、優しく猫をなでながら語る洞さんにとって、私が考える大変な毎日=充実した洞さんの人生なのだと感じた。
コンクールで受賞歴もあるという凄腕から生み出される作品群を見ていると、お宝の山からひしひしと伝わってくる圧倒的な凄さ。
ここにこんなに凄い作品が幾つもある!ということを、誰にも教えたくないという気持ちにすらなる。眼福。